生理不順(月経不順)

生理不順・無月経は、こんな心配も

生理不順

長く生理不順や無月経状態が続くと、不妊へつながる恐れがあります。また、若年層の方の場合、卵巣の機能に悪い影響を与えてしまいます。放っておいてしまうと、癌や骨粗しょう症の可能性が高まります。また、婦人科系の疾患にかかると、その症状として生理不順などが現れるケースもあるため、心当たりのある方はすぐ病院へ相談しましょう。

下記項目では、生理についての説明をはじめ、受診が必要になる目安、診察の詳細、原因、疑われる疾患、治療方法などを細かく解説しております。

自覚症状の有無に関係なく、少しでも心当たりがありましたらお気軽にご相談ください。

 

正常な生理について

周期は通常25~40日くらいで、周期が1週間ほど変わっても正常範囲内です。

年齢と生理

初経から数年しかたっていない年齢の女性で、生理不順になっている割合はおよそ80%です。その理由ですが、10代の身体はまだ成長し切っていない段階のため、生理周期が不安定になりがちだからです。
生理周期は20代前半になると、安定し始めます。

閉経を迎える5年ほど前(だいたい45歳~55歳)になると、女性ホルモンの分泌量は減少して更年期がやってきます。更年期は閉経から5年後まで続き、55歳ほどになると、多くの方が閉経になります。

20歳以下の場合

生理が3ヶ月以上遅れている場合は、放っておかずに医師へご相談ください。治療を受けずに過ごすと将来、婦人科系の疾患や不妊症にかかる可能性が高くなります。

20~45歳の場合

生理不順が続いている場合は、検査でホルモン値などの数値を測定したり超音波検査の必要があります。婦人科系の病気や不妊症にかかっている恐れがあるため、医療機関へ相談しましょう。

45歳以上の場合

生理周期が乱れている場合は、更年期障害や婦人科疾患の発症が疑われるため、速やかに医師へ相談する必要があります。

婦人科受診のタイミング

今回だけ生理が1週間程度遅れているという場合

生理が一週間程度遅れることは健康な人でもよくあるため、ご安心ください。ただし、生理が来ない状態で、かつ妊娠の可能性が少しでもある場合は、ドラッグストア等で販売されている妊娠検査キットを使って調べる必要があります。妊娠検査キットで陽性反応が出た際は、速やかに医療機関へ相談しましょう。

生理不順が繰り返される、生理が来なくなった場合は速やかに医師に相談してください。

生理周期が不規則なことが多いけれど3ヶ月以上間が開くことはない場合

10代でかつ、現在妊娠を希望されていない場合は、いったん様子をみても大丈夫です。ただし、20歳以上でこのような症状がある場合は、一度医師に相談する必要があります。

3ヶ月以上生理がないことがある場合

無排卵が疑われるため、どの年齢の方でも速やかに医師へ相談する必要があります。ただし、初潮から2~3年程度しか経っていない方の場合は、いったん様子をみても問題ありません。

半年以上生理が来ない場合

女性ホルモンの分泌異常が起こっている恐れがあります。どの年齢の方でも、速やかに医療機関へ相談しましょう。

ダイエットや過度の運動で生理が来なくなった場合

極力、速やかに医療機関へ相談しましょう。

また、生理の時期と大きな予定がかぶらないよう、治療でコントロールすることも可能です。「生理周期がずれて予定とかぶってしまう」というお悩みがある方は、お気軽にご相談ください。

婦人科の診察内容と費用について

費用

保険適応内(3割負担)の場合、金額は薬代と初診料を含め、「1万円ほど」になることがほとんどです(この金額はあくまで目安です)。
初診日にはまず問診を行い、そこから必要に応じて、血液検査やエコー検査、投薬治療などを受けていただきます。

診察内容

基礎体温基礎体温を調べることで、排卵が起こっているかどうかが判断できます。
血液検査では、様々なホルモンの数値を調べることが可能です。
エコー検査は内診のため、「恥ずかしい」と思うかもしれませんが、卵巣と子宮内膜の健康状態を診て、疾患があるかどうかを調べることができる検査ですので、受けることを推奨します。
特に「生理が長引く」「経血が多い」といった症状がある生理不順の場合は、子宮の病気をわずらっている可能性があるため、超音波検査を受けることは重要です。
また、20歳を超えた方は特に、婦人科系の病気のリスクが高い年齢です。子宮がん検診などを定期的に受けましょう。

投薬治療を行う場合、生理をコントロールする薬を服用していただきます。特に「多嚢(のう)胞性卵巣症候群(PCOS:Polycystic Ovarian Syndrome」など卵巣の病気があると、後に不妊症へ繋がる恐れがあります。
また、無排卵性周期症の場合は、卵巣癌や子宮癌、乳癌の発症リスクが高くなるため、投薬治療が不可欠です。

受診に抵抗がある方へ

診察風景このページを読んでいる方の中には、「内診が怖い」と思う方はいるのではないでしょうか。当院では、内診に抵抗感を抱いている患者様に対して、内診を強制させるようなことは一切いたしません。遠慮なく医師にご相談ください。

また、排卵の有無を調べるためには、基礎体温の日記をつけることがとても重要です。基礎体温の日記をつけることで、排卵の有無が確認できれば、あまり心配はいりません。ただし、基礎体温をメモに残しても、排卵にともなう体温変化が確認できない状態が3ヶ月~半年続きましたら、医師にご相談ください。

排卵・生理などの仕組み

生理は、妊娠するための動きによって起こっている現象です。子宮は卵子を成長させるために子宮内膜を厚くしますが、妊娠が起こらなくなると、子宮内膜は剥がれて体外へ排出されます。この現象が生理です。この生理の仕組みは、脳からの命令の下で、卵巣や子宮が働くことで動きます。

Step1

子宮の中で子宮内膜が作られます。そして卵巣で卵子を成長させます。

Step2

育てた卵子が排卵されます。性交渉の際に射精されると子宮の中で精子と卵子が出会い受精します。

Step3

受精卵の着床が起こるタイミングまで、子宮内膜が待ちます。

Step4

受精卵が着床しなかった場合、子宮内膜が剥がれ落ちて体外に出ていきます。これが生理です。

このステップを繰り返すことで、生理が毎月来ます。

生理不順や無月経で起きていること

STEP1のトラブル

子宮内膜が作られない、卵子が育っていないことが疑われます。
女性ホルモンの分泌がないと卵子は成長しないうえに、子宮内膜も厚くなりません。
このケースでは、「無月経(生理が長期間来ない状態)」になります。
また、「激しい減量や運動」や「更年期が来たこと」が原因で、生理が来なくなった(または止まった)ことも考えられます。

STEP2のトラブル

排卵が起こっていないことが疑われます。排卵が起こらないと子宮内膜を作り続けてしまうため、必要以上に厚くなります。厚くなりすぎた子宮内膜は剥がれ落ちるため出血は起こりますが、この出血は「生理」とは言えません。
子宮内膜が増殖し続けるため、がん化するリスクが高くなってしまいます。
このタイプの生理不順は、特に若年層に多い傾向が強いです。また、PCOSなどが原因で、起こっているケースも考えられます。

生理不順や無月経のリスク

女性ホルモンが分泌していないことが原因のケース

女子学生特に10~20代の若年層の場合、女性ホルモンの分泌量は子宮を正常に発育させる点において、極めて重要な要素です。
女性ホルモンの分泌量が少ない・もしくは無い状態ですと、子宮が萎縮して妊娠しにくい身体になってしまいます。

また、女性ホルモンには、脂質異常症や骨粗しょう症の発症リスクを低くさせる力を持っています。そのため分泌が少なくなる、もしくは無くなってしまうと、脳梗塞や心筋梗塞、骨折が起こりやすくなります。
女性ホルモンが分泌されていない場合は、直ちにホルモン治療を受けることを推奨します。

排卵がないことが原因のケース

カレンダーを見る女性放置し続けると不妊やがん化のリスクが高くなります。また、多のう胞性卵巣症候群(PCOS:Polycystic ovarian syndrome)の発症が疑われます。
生理不順になると、生理が何日頃に来るのかを予測するのが難しくなります。大事なイベントと生理がかぶりやすくなると、スケジュールを立てるのに支障をきたしやすくなるため、ぜひ治しましょう。

リスク解消のための治療

低用量ピル将来妊娠を希望される方には、排卵を起こす薬を用いて、正常な周期で生理が来るように促す治療を受けていただきます
妊娠を希望されない方には、LEP(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤)を服用していただき、がんのリスクを抑えます。
この方法は、数ヶ月に1度起こる生理でも有効です。また、大きなイベントに生理日がかぶらないよう、周期をコントロールすることも可能になります。

無月経や生理不順の原因

10歳代

性機能が成熟しきっていないため、排卵しないことは珍しくありません。

妊娠

妊娠すると生理は止まります。また授乳期の段階でも、生理が来ない方は少なくありません。

更年期

更年期を迎えると女性ホルモンの分泌量が減少するため、無月経や生理不順が起こりやすいです。

閉経後

50歳~55歳くらいの年齢を迎えると多くの女性は、「閉経(生理が来なくなった状態)」を迎えます。

多のう胞性卵巣症候群

生理不順を訴える患者様に、多くみられる疾患です。
排卵しにくい体質になるため、治療せずに放置し続けると不妊症のリスクが上昇します。

高プロラクチン血症

「プロラクチン」とは、授乳のために必要なホルモンです。出産後に分泌され、排卵を抑える働きを持っています。「高プロラクチン血症」とは、出産していないのにも関わらず、プロラクチンの分泌量が多くなってしまう状態です。高プロラクチン血症になると排卵しにくい状態になり、生理不順や無月経を引き起こします。

甲状腺機能障害

喉ぼとけの下にある「甲状腺」から分泌されるホルモンの分泌量が少なすぎる、もしくは多すぎると、生理不順の症状を起こします。生理不順だけではなく、あらゆる不調も現れるため、速やかに治療を受けることが必要です。

ダイエットや過度な運動・ストレス

特に、若年層の無月経・生理不順の原因としてよくみられます。進行すると排卵も女性ホルモンの分泌も無くなる可能性が高くなります。

体重と生理

体重が大きく減ってしまうと、脳は「命が危ない」と判断します。特に妊娠は身体に大きな負担がかかるため、そのような危機的状況下にいる場合、脳は妊娠するために必要な排卵や生理を停止させようと働きます。
過度な運動やストレス、ダイエットによる大幅な減量が引き金になって、脳が「命が危ない」と判断すると、排卵が起こらなくなってしまいます。この状態を放置してしまうと、卵子が発育しなくなり、女性ホルモンの分泌も起こらなくなります。
無排卵の段階ですと、短期間での治療で治りますが、女性ホルモンの分泌が起こらなくなる段階になりますと、長期間の治療が必要になります。また、あらゆる疾患の発症リスクが高くなってしまうため、放置は禁物です。

無月経や生理不順は治りますか?

診察室

甲状腺機能異常などの疾患が原因で起こっている場合は、その原因となる疾患をきちんと治すことが不可欠です。

PCOSなどの場合は、自然排卵できるまで回復させるのが大変ですが、症状や状態に合った薬を服用し続けることによって、生理周期を正常にさせる効果が期待できます。焦らずゆっくり、治療を継続していきましょう。

当院では「妊娠を考えている」「将来のがんを予防したい」といった患者様の要望を考慮した、丁寧な治療を心がけております。

また、過度な運動やストレス、ダイエットなどが原因で起こっている場合は、現在の健康状態をきちんと把握された上で、精神的・肉体的負担が少なく済む生活習慣の改善・治療が重要です。女性ホルモンの分泌が起こらなくなった場合は、女性ホルモン剤の服用を2年ほど継続する必要があります。この治療法は特に、排卵がない患者様が行うと、かなり早く改善できる可能性があります。こつこつ治療を継続することで、将

来不妊になるリスクが低くなります。

基礎体温を記録しましょう

基礎体温を記録する女性排卵がきちんと起こっているかどうかを把握するために、基礎体温は毎日測って日記につけましょう。習慣化するのは大変ですが、将来妊娠する準備として、基礎体温の日記を書く習慣を作ることは重要です。ぜひ、排卵の様子を毎日書き残しましょう。